翻訳とは

英語が出来る人=翻訳が出来るとは限りません。翻訳には語学力の他、翻訳の際に不明な点を調べる調査力、専門知識、用語やフォーマットの統一などきめ細かな配慮も必要です。このような力は実務経験を通してこそ身につくものなので、翻訳には実務経験と実績が非常に重要です。

翻訳は職人技に近く、長年の経験と勘の積み重ねによって培った技術で、翻訳者が11つ丁寧に仕上げていく作業です。

こうした人の手による翻訳は、決して翻訳ソフトや機械翻訳では置き換えることの出来ない作業です。

翻訳はある言語で表された文章を他の言語に置き換えることで、私が主に翻訳しているのは日本語から英語への翻訳です。正確な翻訳が重要であることは言うまでもありませんが、そこに至るまでの過程で意外と表向きに議論されていないのが翻訳の元となる原文についてです。

産業翻訳では原文の筆者は作家のような文章のプロではなく一般人です。そのため、原文の日本語が必ずしも正しい日本語、分かりやすい日本語であるとは限らず、様々です。特に技術翻訳となると、筆者は技術者になるため、どちらかと言うと文章を書くのが苦手な人が書いた文章が多いのも事実です。私も実際に仕様書などシステムエンジニアが書いた文章を訳すことがありますが、論理的に構成されていなかったり、誤字脱字があったり、復唱が多かったり、筆者が頭の中で描いているアイディアが完全に原文に表現されていないことも多いです。

また、日本は「一を聞いて十を知る」文化のため、原文の日本語もこのような傾向になりがちで、文字の上では表現されていない、作者の真意を読み取ること、すなわち行間を読む深い理解力と洞察力も必要になります。翻訳は文章を訳すことではありますが、時には実際に文字の上では表現されていないことも、筆者の言いたいことをより分かりやすく伝えるという目的で訳文に反映させることもあります。こういったケースでは、訳文をお渡しする際、依頼者にその旨をしっかりとお伝えしております。